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【レポート】「水庭 -間-(すいてい-はざま-)」 (黒のギャラリー 京鳥 / 京都)

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個展「水庭 -間-(すいてい-はざま-)」は、4/27にて会期終了となりました。
貴重な時間を割いてお越しいただいた皆様にお礼申し上げます^^

「水庭(すいてい)」シリーズは、着想から約7年の歳月をかけて撮りため、展示できるレベルまで作品数と完成度を高めてきた、私にとって非常に思い入れの深い作品群です。
創作のきっかけは、京都・龍安寺などに代表される「石庭」でした。
石庭の枯山水が、水を用いずに水のある風景や宇宙観を表現していることに感銘を受け、「その根源となるような、日本人の美意識に深く響く原風景が、実際の“水辺”にあるのではないか」と考えるようになりました。
そんな思索を巡らせていたある日、偶然訪れた海辺の岩場で、日が落ち、まるで時間が止まったかのような深い「青の世界」を目の当たりにしました。それは、石庭を静かに眺めている時に感じる感覚と通じるものがあり、私は夢中でシャッターを切りました。この瞬間から、「水庭」シリーズの創作が本格的に始まったのです。
幸運なことに、最初に撮影した作品が海外のコンペティションで評価されたことを励みに、日本全国の水辺を訪ね歩き、「水庭」となりうる原風景を探し求める旅が始まりました。
特にこだわったのは、日が落ちた直後の「黄昏時(たそがれどき)」に撮影することです。空と水面が深く、淡く、刻一刻と変化する青に染まるこのわずかな時間にこそ、日本的な美意識や無常観が凝縮されていると感じ、その「見惚れるような青の世界」を写真で表現したいと強く願いました。
しかし、日没から完全な暗闇に包まれるまでの限られた時間に行う長時間露光撮影は、天候や光の条件など、想像以上に「運」に左右されます。一晩に数枚しか撮影できず、条件の良い日に巡り合えるのも年に数えるほど。まさに、忍耐力が試される撮影でした。
そうした苦労と、いくつもの奇跡的な出会いを経て生まれたのが「水庭」シリーズとなってます。

そして、今回の個展開催を力強く後押ししてくれたのが、「伊勢和紙」の存在です。
私が「水庭」シリーズで捉えたかった、心で感じた情景の繊細なニュアンス、特に「青」の深みや諧調を最大限に引き出してくれる可能性を秘めた、写真印刷に適した伊勢和紙が、昨年、大豐和紙工業様によって開発されました。
昨年、試しに鯉をテーマにした作品でこの和紙を使用させていただいたところ、その素晴らしい表現力に確かな手応えを感じ、「水庭」シリーズでの個展開催を決意するに至ったのです。
常に進化を続ける伊勢和紙への感謝とともに、これからもこの素晴らしい和紙と共に、新たな創作活動を続けていきたいと考えています。

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作品を印刷した伊勢和紙のサンプル展示

今回の展覧会では、昨年に引き続き、Webサイト制作を担当させていただいた大豐和紙工業株式会社さまの主力商品である伊勢和紙を作品に用いていることから、協賛に入っていただきました。
そして、伊勢和紙全種類に作品を印刷しての商品サンプルの展示を行いました。
多くの方が、伊勢和紙を実際に手に取っていただく機会を設けられることで、展覧会をより一層、楽しんでいただけたように思えました。
こういった相乗効果が期待できるコラボレーションを今後も計画してければと考えています。

会場までの通路

会場までに通路には、代表作である樹木を被写体とした作品「UTSUROI」から春夏秋冬の循環をテーマにセレクト展示を行いました。

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